直線化挿入法の利点
今までのCF挿入法は、うまく行ったから次回も同じようにできると思っているとうまく行かない事が多かったと感じられる先生が多いと思います。その理由は、内視鏡上の視野は同じように見えても、空気の分布とCFのたわみが、症例によってかなり異なるからです。
今回の方法は、この原因となる、空気を無くし、さらに、ほとんどたわむことなく挿入するため、80%位の症例で、同じ操作で挿入できるのが特徴です。すなわち、理論が実践できるという事です。
この方法を行う際に必要な事は、CFを押し込まない事ですが、どのくらいの力だと押し込まない事になるのかが、大切だと思います。ファイバーを親指と人差し指と中指の3本の指先でつまんでください。この力で押せる範囲が押し込まないという事と考えてください。
右手は、CFを左右に回転させるだけで、左手のアングル操作で、尺取り虫のように進めるというイメージがとても大切です。
私の場合、易しい症例(工藤先生のパターンAにあたる症例と思われます)は、脾彎曲まで、右手の親指と人差し指でファイバーをつまむことで挿入可能です、ファイバーを握る必要はありません。
直線化CF挿入法
(送気しないで行う方法ですが、S状結腸を越える方法はほぼ確立しました)
CFの注水孔から水を注入しこの部位の空気を完全に取り去ります。次に光源の送気スイッチをOFFにします。この方法では、ブスコパンは、送気を始める直前に筋注しますので、開始前には使用しません。
左側臥位で検査をはじめます。
肛門および肛門管にキシロカインゼリーを塗布します。
CFの先端から10cm位のところを持って検査をはじめます。
肛門管
肛門の開口部に、CFの先端を押しつけ、その方向にCFをゆっくりと進めます。
直腸に先端部が入ってから、CFの40cmの目盛り位のところまで潤滑油を十分塗布します。
潤滑油を塗っていない40cmの目盛りの手前のところをガーゼで巻き、右手で保持します。
直腸からS状結腸中央部へ
肛門管から直腸にはいると、CFをUP方向に曲げると襞と襞の隙間が水の中に見えます。見えなければ、10ml程注水すれば見えてきます。左側臥位なので、進行方向の90度左方向に、ファイバーをひねると、襞と襞の隙間が見えてきます。この隙間の右端と左端の中央部に進行方向はあるはずですが、大腸が十分畳み込まれている時は、隙間に沿ってCFの先端を動かすと、次の隙間が交わっているところがあり、その方向に大腸があります。見つからなければ同じ操作を繰り返せば、必ず進行方向が見つかります。
送気をしていないので、何度繰り返しても、同じ状態になりますので、引き抜こうが回転させようが自由自在です。ここで行ってはいけないのは、進行方向がわからずに押し込む事です。押し込むと大腸が引き延ばされて、直線化法が使用出来なくなります。もし、限界を感じたら、この時点で、従来の方法に戻ればよいのです。この場合は、ブスコパンを筋注してください。
先が予想される方向にCFを進める時には、CFに軽く押し込むテンションを与えながら、必ず、右か左か、どちらかにトルクを掛けてください。トルクをかけるだけで、進んでいく事が多いと思います。
トルクをかけないと大腸がたわみますので、必ずトルクをかけてください。トルクのかけ方の強さですが、胃カメラの捜査時に必要な位の力で十分です。強く握らなければならない時は、間違ったやり方をしていると言うことです。
ファイバーを進める時は、深部に行くのに障害となっている目の前の襞を、カーテンを開く時のようにファイバーの先端でよけてゆきます。この操作ができる時は、順調に進んでいる事を示します。
また途中で空気が残っていたら、極力吸引しておきましょう。視野が全くとれない時は、10ml位送水すれば、だいたい確保出来てきます。この方法で、視野があまりとれなくなって来て、CFが15−20cm位の所に来たら、ここがS状結腸の中央部です。
S状結腸中央部から下行結腸へ
ここで体位変換(仰臥位)をします。このことにより、上腹部に来ていた先端が骨盤の中に落ち、同時ファイバーの先端が左から中央部へ移動し、S状結腸の後半部がある骨盤左下スペースが広がりますので、進行方向が見つけやすくなります。
CFは今までと同じ操作を繰り返しますが、ここからは、少し右にひねった方が挿入しやすいと思われます。しばらくすると、脾彎曲に達します。先端が進むこと無く押し込むことは極力さけてください。腸管が伸びてしまいます。
視野の取り方
1ファイバーをしっかり握って力を入れないと、視野がとれないときは、襞を引っかけて、どちらかにひねって引き戻してみてください。
この時、送気すると元に戻れなくなります。
絶対に送気しなければ、何とかなります。とにかく我慢です。魚釣りの時のあたりを待つ心境でクリアーしましょう。
どうしても視野が確保できない時に、すこし送水しますが、送水ポンプ(オリンパスで販売しています。)を使用すると少量の水で視野が確保できます。残便で視野が確保できにくいときも、送水ポンプが有効です。
今のところ、ここまでとします。
この方法は、どの時点からでも従来の方法に戻せるので、すべての患者さんに挑戦出来ます。皆さんのCFで、この直線挿入法で脾彎曲まで行ける人が増える事を願っています。少なくともRSの通過は簡単になります。患者さんが痛みを感じないのが良いと思います。
質問はいつでも受け付けます。木曜日の午後であれば、デモに出張可能です。患者さんが楽なCFテクニック開発を求めて頑張っています。