物理学と古武術を応用した胃カメラの挿入方法
*今までの胃カメラの挿入法は、カメラの検査を受ける人の
生体反応をあまり考えていません。人は、他人から
外的刺激を受けると、必ず何かの生体反応を起こします。
*その反応に対して、刺激を与えた人がどう対処するかで、
その後の反応が異なってきます。

たとえば

*カメラが舌に触れるとどういう反応を起こすかを観察して、
嘔吐反射をおこさない対応応をします。
*麻酔が効いていると、舌は、カメラに対して強い反応は起こしませんが、カメラの
動きと共に舌が押し込まれます。そうすると舌根が刺激され、嘔吐反射がおきます。
対処方法
*舌にカメラが当たらないように舌の位置をずらしてもらう。
胃カメラの操作方法
*人は、加速度のある動きには、過剰反応しますが、
加速度が加わらない動きには、あまり反応しません。
F=mα
一定速度(α=0)では、力にはなりません。
(摩擦力は局所麻酔でごまかしましょう)

*では、カメラの動きに加速度を与えない方法は

*胃カメラを動かすとき、腕だけで操作すると、
一定の速度でカメラを動かすことが難しく
カメラに加速度が加わって、喉を刺激し、
嘔吐反射を誘発します。
*(解決方法) 腕のみで押さないで、身体全体を移動させる
ようにしてカメラを操作すると、加速度が発生しにくく、
最小限の力で、より強くなめらかに挿入操作が出来ます。
*足をそろえないで、前後にずらします。そして自分の身体全体を
膝を使って倒すような気持ちで進めると、押す力は少しでも、すーっと
進みます。これは、古武術の身体の使い方(身体の重心で押す)です。

*同じ力を加えても、接触面積を広くすれば、胃の反応は穏やかになる。
胃角部を通過するとき、大彎に添ってカメラを動かすと
胃カメラが胃壁に当たる接触面積が広くなり、嘔吐反射が弱くなる

*左右アングルを使用する。
左右アングルは、カメラのシャフトの回転操作を減らすために必要です。
回転操作が少なければ嘔吐反射は少なくなります。

*胃の反射(と思われる?)を利用する。
過度な送気は胃の痛みを引き起こします。
送気を少なくして、胃を広げるためには、Jターンのまま
カメラの先端で大弯側のヒダを軽く刺激しながら
胃底部まで観察します。
大彎のヒダが反射的に広がります。
この後Uターンします。
あまり送気しなくても、ヒダとヒダの間が広がります。
粘膜を広げすぎないことが、早期胃癌を見つけるコツです。

呼吸法の応用
*基本原理 
吸気時には、呼吸筋以外の筋肉は弛緩するので、息を吸いながら重い物を
持つことは出来ません。息を止めた時と、息を吐く時は、重い物が持てます。
呼気時に、声(音)がでるときは、声帯に力が入っています。
呼気は筋肉の脱力だけで、力を入れなくても出来る事を説明しておきましょう。
ため息をつくように息を吐いてもらう様にします。

*この原理の応用 
*被験者に、吸気を長く、呼気を短くして貰います。カメラを吸気に合わせて動かします。
息を止めると力が入りますので、呼気と吸気の合間をなくすように誘導します。

*咽頭でも、吸気時に押し込むようにします。最大の難関は、食道入口部で
カメラのジャバラ部を回転させると、嘔吐反射がおきる事です。このため、
入口部にジャバラ部がある時は、カメラを回転させないで、アングル操作のみで
入口部を進める必要があります。この時、カメラのアングルをDownLeft
(左・下)にする必要がありますので、あらかじめ練習しておきましょう。 

*食道では、軽く握って保持していると、吸気時に自然に、カメラが内部へ進んで行きます。
*胃の中では、吸気の時は、画面が遠ざかるので、内視鏡の画面が遠ざかるとき
に押し込み、近づく時には押し込まない様にします。押し込まないと言うことは、
力を入れないことではなく、カメラの位置を保って保持することです。
*幽門部は、十二指腸入口部にカメラの先端をゆっくり押し込んでから、カメラに右回転
のトルクを与えます。この時アングルは左アングルにして視野を保ちます。
そのまま、やや押し込み気味にカメラを保っていると呼吸と共にカメラの彎曲部が
胃壁と腹部臓器で頭側へ押されることとなり、力を入れなくても球部に入って行きます。

*カメラを押し込んだり回転させたりするときは、吸気時に行います。
以上のことが出来れば、約70%の患者さんが、嘔吐反射なしで、
胃カメラの挿入が出来るはずです。
ビデオを作成中ですので、お待ち下さい。